逆説の日本史10

☆逆説の日本史10巻 井沢元彦
 日本史を、まったく新しい視点で切り取る論文エッセイです。
 10巻目の今回は、信長について、あれこれ書いてあるのを書評します。
 論旨は一貫していて、
 
 1:信長を残虐&宗教に不寛容というのは、当たらない。
 2:信長は、政教分離の基礎を作った
 3:信長は、自らを神とあがめさせようとした。
 
 この三点に終始しています。
 1と3については、この書物が出てから、かなり関連番組(映画も含む)とかが出たので、そのCMでちらほら知ってましたが、2についてはなるほどなーと思ってしまいました。

 政教分離の基礎を作るきっかけとして、例の本願寺焼き討ちとか、一向一揆の虐殺とかがあったらしいんですが。
まあ、それについては「戦国時代」という背景を考えれば、無理からぬ話だなと思うので、特に反論はないんです。

でも、中国との関係に触れてる部分で、どさくさにまぎれてA級戦犯の話を持ってくるのはどうだろう(笑) わたし個人の意見ですが、中国人につけいる隙を作ってる日本人の方に、非があると思うけどね。
まあ、それはどうでもいいんですが。
井沢さんが信長好きだってことは、よく分かりました。
あと、日蓮宗がお嫌いみたいだってことも、よく分かりました(笑)
こういう論文エッセイというのは、個人の嗜好とかがよく出るので、非常に面白いですね。無味乾燥した論文よりは、ずっと読み応えがある。
ただ、今後も続けて読みたいか、というと、そうでもないんだな。
この人の話は、論拠となる文章も、ちゃんと記してあって、どこかのだれかさんと違って、作者に敬意を払っているのが好感を持てますが、そこまでですね。
よく調べてるとは思うけど、それ以上じゃない。
過去問には詳しいが、未来についてはどうなのかなと思うことが、ちょっと感じる部分もありました。

 いま、日本は、大幅に変革を求められてる時代なんだと思います。
世界的にも、今までのやり方じゃ、うまくいかなくなってることは、明白ですね。
こういうときに、世界に通用する、どんな価値観を提唱できるか。
ちょっと考えたりもしました。

 面白かったし、読み応えもあったけど、もう充分読んだな、という感じもしますので。
この人の作品は、もう読まないと思います。
史書を研究して、人の論旨から考えたことを発表するのがお金になるんだから、やっぱり作家って、どっかいかがわしいよな〜と思ったりしたのは、秘密です(笑)