宮本武蔵 3

宮本武蔵(三) (吉川英治歴史時代文庫)

宮本武蔵(三) (吉川英治歴史時代文庫)

宮本武蔵3』 吉川英治
(ストーリー)
 一流の剣士達をかかえる吉岡流。その当主が武蔵に敗れた。右腕を奪われた彼を見て、弟が復讐を誓うが、逆に武蔵にやられてしまう。
 一方、佐々木小次郎を名乗っていた又八は、小次郎本人と剣を交えてしまう。
 本物の前で堂々と、「佐々木小次郎だ」と自己紹介した彼……(笑)
 殺すに値しないと、又八は、お情けで命を長らえることになる。
 一方、又八の元婚約者お通は、武蔵恋しさのあまり、病気になってしまっていた。
(感想)
 このストーリーのおもしろさは、王道を歩いている武蔵と対照的な、又八のいきざまにあるんじゃないかなと思うんです。武蔵が有名になればなるほど、いじけて武蔵がしくじることを願う又八の姿は、よくある人間のありようってかんじで、興味があります。
 弱い人間なのよ、又八。
 そういうどうしようもない人間にも、暖かなまなざしを忘れない、吉川さんの筆はなかなか人情的ですね。
 一方で、そんな情けない又八に、殺されかけるお通さん。
 お母さんにそそのかされたからって、殺そうとする又八も又八ですが……。
 お通さんも、これで行くところがなくなってしまって、不幸ですね。
 あと、鉄砲やら弓やらが狙ってる中を、決闘に赴く武蔵。
 どうなるのかは、次巻を待てってところです。
 うまいねー吉川さん。
 乾いた口調なので、血なまぐさい描写があっても、胸焼けすることがないのは助かります。
 光悦とのやりとりは、そんな血なまぐさいシーンのなかの、一輪の花のようでした。