燃えよ剣 (上)

燃えよ剣(上)』 司馬遼太郎
(ストーリー)
 田舎の百姓のワルガキにすぎなかった土方歳三。彼は、攘夷を口にする近藤勇と共感、新撰組を作る。局長は近藤、自分は副長。しかし、その組織の運営方法は、士道にそむくものはすべて死罪というすさまじいものであった。次々と出てくる脱走者、粛正の嵐がふきすさぶ。憎まれる土方だったが、沖田だけは彼に理解を示していた。
 そんななか、宿敵・七里から、果たし合いの挑戦が来る……。
(感想)
 いままで吉川英治の『宮本武蔵』を3巻まで読んでいまして、どうしても吉川さんと比べてしまうのですが、スタンスが全然違うんですね。
 もちろん、出版社も違うから、色が違うのは当然なんですけど……。
 吉川さんがモネの「印象派」なら、司馬遼太郎は、マネの「印象派」かな、という読後感です。同じ絵で、非常に似てるんですが、やっぱり違う。
 司馬遼太郎のほうが、瀟灑でちょっとクールなところがあります。
 「坂の上の雲」のときも思ったんですが、視線が大きい。
 吉川さんがぴったり寄り添うような質なのにたいして、司馬遼太郎は、それをつきはなし、さらにそれを超えている。
 土方歳三を描くに当たっても、その狂気ともいえる粛正熱や、政治色に対する嫌悪について、ひじょうにクールに書いてます。
 それと、桂小五郎についても書かれているんですが、この人非常に運がいいんですね、それもクールに描いてます。新潮社の特徴かも知れません。

燃えよ剣(上) (新潮文庫)

燃えよ剣(上) (新潮文庫)