竜馬がゆく (7)」司馬遼太郎
司馬遼太郎目線からみた竜馬伝の続きです。
今回は、お慶と暗君容堂が主要人物。
お慶という、商売の天才が出資したお金で手に入れた船を紀州に沈められて、公海法上紀州のミスであることを相手にのませた竜馬が、薩長土の軍事革命をたきつけておきながら、自分は大政奉還を考える。その竜馬の立案とも知らず、土佐の暗君容堂はその無血革命案に驚喜する、というストーリー展開。


お慶が、竜馬の秘書を質にして、お金を出してくれるというくだりが面白かったです。いかにも乱世にありそうな話ですね。
暗君にあれだけ恨みがありながら、それよりも大きな外国の脅威を憂い、「日本人」であることにこだわった竜馬は、それまでともに戦ってきた人間を裏切ってしまうわけですが、この覚悟は並ではありません。


勝海舟から大政奉還の案を教えられていたとは言っても、それを実現し、政府を倒したあとのことまで考える。竜馬は夢を現実にする能力と、現実の厳しさを知っているという点で、立派だと思いました。
こういう、並でないところはほかにもあって、正しい、と思ったら、相手が紀州藩でもかみつくという竜馬の気骨もすごい。


無能が上司になったら、その集団は滅びるしかないという歴史の必然についても、司馬さんはしばしば触れられていますが、現実はそんなに単純でもないと思いますね。政治的に有能とは思えない人物が首相になったり、マスコミ受けする人物が人気になって日本という国を傾けさせたり、歴史に必然というものがあるとはとても思えないのが昨今の歴史ですもの。


竜馬は三十代で事を動かしてますが、今の日本で三十代以上の人間が「一度失職して活躍の場を与えられる」っていう状況も、見たことがないし。
日本も限界にきてると思う今日この頃。

 



新装版 竜馬がゆく (7) (文春文庫)

新装版 竜馬がゆく (7) (文春文庫)