「竜馬がゆく (4)」司馬遼太郎

 司馬遼太郎目線からみた竜馬伝の続きです。
今回の主要登場人物も三人。


竜馬に恋をするあまり、自ら竜馬の寝床へ赴き、自分の操をささげようとするさな子。そして、自分の理想を貫くあまり、時代の犠牲になった武市。最後に、土佐藩の暗君、容堂。


あらすじは、新撰組に狙われながらも、政府のカネで海軍学校を作ろうとしている竜馬。浪人の就職先を北海道に決めたり、軍艦を手に入れたりと、とっぴょうしもないことをやり始めていた。一方長州藩禁門の変で失脚、倒幕派だった武市は投獄され、切腹することになった。さな子は、そんな情勢にもかかわらず、竜馬への思いを募らせていく、というストーリー仕立て。


印象的なのは、最初は勤王派のふりをしていた容堂が、長州が没落するや一転、武市に拷問したという話でした。いるいる。こういう人いますよ。自分が一番だと思ってるから、人をひととも思わぬ所行もゆるされると思ってる。
それにひきかえ、武市の死の立派なこと。たしかに彼は、観念主義的なところがいっぱいあったとは思うけど、それを最後までまげず、意地をとおしたところは、昨今の男どもにはない気概があるかな、という気がしないでもない(汗)


意地をまっすぐに通す、という点は、少しは竜馬も見習ってほしい。あのままじゃ、さよ子さんが気の毒です。竜馬に思い入れのある作者の目から見ても、ずるいんだよねー(三人もの女に惚れられてるのに、当てられてる面もあるかもしれないけれど)。


ただ、こういう人物造形をきっちり書くという作業は、簡単そうだけど難しいのね。思い入れがあればそれだけ、自分を律する必要があるし。司馬さんの並でない筆力と、自制心の強さを感じたエピソードでありました。

新装版 竜馬がゆく (4) (文春文庫)

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