「竜馬がゆく (3)」司馬遼太郎

司馬遼太郎目線からみた竜馬伝の続きです。
今回の主要登場人物も三人。


才士だが、自分の策に溺れ、人を愛することのない清河。口が悪く、人を見るとバカにしか見えない癖に、竜馬をやたらと気に入る勝海舟。そして、竜馬が惚れてしまうおりょうさんです。


あらすじは、脱藩していたことから捕縛されそうになった竜馬が、開国派である勝海舟を敵視する重太郎とともに勝を殺しに行くが、逆に彼に感化されて倒幕の意志を固め、「土佐藩」「長州藩」「薩摩藩」といった藩中心のものの考え方から、日本人である、という気持ちになっていくストーリー展開。


袂を分かった武市が、暗い人斬りの道を歩いているのに対して、竜馬がどんどん表舞台を歩いていくという対比は面白かったです。
清河の人間としての器の小ささと口の悪い勝海舟のとの、格の違いがうまく描き分けられているのも面白い。


印象に残ったセリフを二つほどあげます。
竜馬のセリフとして、「人生は一場の芝居というが、芝居とちがう点が、大きくある。芝居の役者のばあいは、舞台は他人が作ってくれる。なまの人生は自分で、じぶんの『がら』にかなう舞台をこつこつ作って、その上で芝居をするのだ。他人が舞台を作ってくれやせぬ」


また、人斬り以蔵の言葉として、
「ことをなさんとすれば、智と勇と仁を蓄えねばならぬ」
ということばが、印象的でした。
いままで無為にすごしてきた竜馬が、めきめき頭角を現してくる。
当時の「日本」には日本人がいなかった、という洞察を司馬さんが書いておられますが、同じ地球人だ、というところまでいかなかったのは、時代の限界かもしれませんね。

新装版 竜馬がゆく (3) (文春文庫)

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