「竜馬がゆく (1)」司馬遼太郎

作者の司馬遼太郎は日本の小説家、ノンフィクション作家にして、評論家。実証性の高い娯楽作品を書いたことで有名です。


竜馬がゆく1」には、桂小五郎が出てきますが、ここ一週間でわたしの調べた桂小五郎のデータよりも、詳しいだけでなく面白いので驚きました。桂が医者の子であるにも関わらず、武士の養子になったいきさつ、養子縁組の裏話、竜馬との出会い。インターネットのない時代ですから、よくこんな細かいところまで調べられたな、と脱帽です。


ストーリーは、小さい頃いじめられっ子だった竜馬が、成長するにつれてその大人物ぶりを発揮していく成長物語です。お色気と活劇、剣の試合、そして大地震。次々と事件が続く、エンタメの見本のような作品で、司馬が竜馬になりきって、竜馬に意外な言行をさせるところは、司馬自身の取材からくる確かな想像力を感じさせます。


桂小五郎が、「長州の怜悧、薩摩の重厚、土佐の与太というのはおもしろい。もし一男子にしてこの三つの特質を兼ねているものがあれば、それはかならず大事をなす者だ」
という台詞を吐いてるところでは、自分はどうなんだろう、与太ばかりだと考える竜馬が好きですね。女との噂になったときも、行動はわしにまかせ、噂は人の口にまかせる、という剛胆なところも英雄らしい。


ただ、日本の武士ということを錦の旗にして、田鶴よりもお徳さんのほうにいくというところは、「竜馬は本能しかないのか!」と思ったことも、たしかですが。
桂小五郎が竜馬との試合で、理詰めで考えるあまり自縄自縛になるところが面白かったです。司馬自身も、合理主義的な思想に傾倒していたというウィキペディアの記事もありますが、自省もあったのかも。